幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない
どうしたって、納得いかない。
でも面と向かって聞く勇気もない私。
すごすごと、裏からそおっと入る。
裏口を開けるとバイトの結城君が調理中。
こっちを向いてお帰りなさいといいそうだから、口の前に人差し指を上げて、しずかにと見せる。
抜き足差し足で結城君の隣に行くと、どうしました?と小声で言ってくる。
何を作っているのか見るとビーフシチューなので、一旦火を止めて、手招きして女子更衣室へ。
戸惑う結城君の腕を引っ張って連れ込む。
「どうしたんですか、緑さん?」
「……カウンターの左端の人、誰?」
結城君がゴクンとつばを飲み込む音がする。
「えーと。僕もよく知りません。」
「……私に嘘つくなんて、百年早い。いい度胸だね、結城君。」
おどおどと目をそらして、手をもむ結城君。珍しい。これは、予感的中なのかな。
「結城君。私ね、今週毎日あの人見かけるんだよ。しかも、店長のあの緩みきった顔。」
「……緑さん。大丈夫ですよ、店長に限って天地がひっくり返ったって心配しているようなことはありません。」
すると、店の方から二人の大きな笑い声が響いてきた。
「……。」
「直接聞いてみたらどうです?」
下を向いている私を見ながら、ため息をついて結城君は出て行った。