Lies and Truth
しんとした部屋に、コンコンとノックの音が響いた。
「ちょっといいかしら?」
ドア越しに聞こえるお母さんの声に、一瞬胸がどきんと跳ねる。
「どうぞ、入って」
静かに扉が開くと、どことなく表情に影を宿したお母さんはとんでもないことを口にし始めた。
「優陽くん、今日泊まっていかない? 明日は休日だし、部屋もベッドも余ってるからよかったらゆっくりしていって」
優しい言葉とは裏腹に、お母さんの目は笑っていない。怒っているわけでは無さそうだけど、どこか懐疑的な目に違和感を覚えて、横から口を挟んだ。
「そんな、お母さん悪いよ。優陽は今日そういう予定で来たわけじゃないんだから」
「いや、大丈夫だよ緋莉。せっかくだからお世話になろうかな」
優陽の顔もどことなく険しいように思える。なにか考えがあるのだろうか。
「うれしいわ。じゃあ今夜は家にいてね。緋莉、隣の部屋を用意しておくから、あとで案内よろしくね」
そう言うと、わたし達の返事も待たずにお母さんは扉を閉めた。