Triangle Love 7 ~ 揺れる心は夏の蝶 ~

[7]三葉

モトコちゃんと空き教室で話してから、数日が経過した木曜日。

その放課後。

あたしは、ヨウを校舎裏に呼び出した。

モトコちゃんいわく、『誰かを呼び出す時は校舎裏なんだよぉ!』ってことらしいので、その言葉に従った。

周りには人の気配が無いから、従って良かったって思う。

制服のスカートに付いているポケットの中に手を入れて、貰ったピアスに触れた。

見えなくても、クローバーの形をしていることが、触れただけでもなんとなく分かる。

時折り、冷たい風が吹きつけてきた。

でも、緊張のせいか寒さは感じなかった。

石を軽く蹴ったりしてしばらく待っていると、ヨウがやって来た。

『お待たせ。』

ヨウが静かな声で言った。

『うん。ありがと、来てくれて。』

あたしは答えた。

そして、大きく息を吸った。

吸い込んだ空気が冷たい。

ふと、太陽が沈みかけていることに気がついた。

もう夕方だからか、なんて余計なことを考えられる程には落ち着いてきた。

後は勇気を出すだけだった。

もう止まるつもりはない。

『俺を呼び出したってことは。答えが出たんだな。』

『…ヨウ。今までずっと、あたしに優しくしてくれてありがとう。辛い時、側に居てくれてありがとう。遊園地、楽しかったね。クローバーのピアスも大切にする。だからさ。これからもよろしくね?』

『そう…か。』

ここまでは、何とかヨウの方を向いて話すことができた。

苦しそうな表情をしたヨウが、あたしの目に映った。

このタイミングで、彼から目を逸らしてしまった。

勇気を最後まで…。

大切な人を傷つける勇気を…。

ポケットに入っているピアスを握りしめた後、あたしは話を続けた。

『でもそれは…。彼氏じゃない。友達として…ね。』

『…今度は本気みたいだな。』

『ごめん、ごめんね…?ずっと優しくしてくれたのに…。本当にごめん…!』

『…謝るなって。』

『…ごめんね。あたしのわがままが叶うなら…。これからも、ずっと仲良くしてくれると嬉しいです…!』

『…もちろんだ。前にも言ったけど、関係が変わってもミツバの味方だ。変わらない。これからもよろしくな。』

『ヨウ、ありがと…。』

『…。』

あたしはヨウを置いて、校舎裏から離れた。
< 49 / 52 >

この作品をシェア

pagetop