魔女の瞳Ⅳ
真っ直ぐ家に帰り、すぐに棚からデッドゲイト家秘伝の傷薬を取り出す。

魔女は魔術の他に、毒にも精通している。

転じて、薬にも詳しいという事だ。

この傷薬には治癒力の促進の他に、魔力回復や解毒の効果もある。

万能薬と言ってもいいかもしれない。

治癒魔術の効果を受け付けない桜花にも、よく効く筈だ。

それを、梟の使い魔『長老』に持たせる。

部屋の窓から飛び立っていく長老を見送って、私は書庫へと向かった。

…魔女の本拠地には、大抵調べ物をする為の書庫があるものだ。

私の洋館にも、数百の蔵書がある。

歴史、魔術、毒、呪術、魔術品、魔物、異世界…。

あらゆる分野の辞典が、本棚には収まりきらずに床にまで積み上げられている。

そのうち虫干ししなければ。

この辞典一冊でも、アンダーグラウンドでは数百万の値打ちのあるものだ。

全部売り払えば、無人島の一つも買い占められるかもしれない。

それはともかく。

私が手に取ったのは歴史、そして魔道にかかわる人物について記された辞典の二冊だった。



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