魔女の瞳Ⅳ
容疑者は何昼夜にもわたって起き続けていることを要求され、部屋のなかを歩き回らせるなどの方法で徹底的に睡眠を妨害された。

1645年8月27日に魔女として絞首されたジョン・ロウというブランデストンの高齢の牧師は、水責めを受けた後、足の皮がすりむけて血まみれになるまで三日三晩歩き続けさせられたと伝えられている。

 肉体の表面を損傷せず、したがって当時のイングランド法に照らしても適法とせざるをえないこの奪眠拷問に堪えられる人間は存在しない。

自分が何を喋っているかも理解できない朦朧状態に陥った不運な犠牲者から魔女の自白を引き出すのに、なんの困難があろうか。

いや、実際には自白の言葉すら必要なかった。

「お前は魔女か」の問いに、疲弊しきった容疑者がうなずきさえすれば十分であり、使い魔に命じた様々な悪行の具体的な内容については、親切にもホプキンスたちが勝手に付け足してくれたのである。

こうしてホプキンスは、200人を優に越す人々を魔女として告発し、そのうち記録上確認できるだけでも半数近くが絞首されたと言われている。



 
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