魔女の瞳Ⅳ
「面目次第もない」

今にも切腹しそうな勢いで、時貞は頭を深々と下げた。

…蘭花の洋館。

ベッドには、包帯を巻かれて眠る蘭花の姿。

傷は、背中の裂傷、両足の皮膚の重度の擦過傷。

何より重いのは、背中への重度の火傷だった。

…まただ。

また私の夢と、傷の箇所が合致する。

やはり蘭花も、治癒魔術は受け付けなかった。

「一体何があったの?」

「……」

苦虫を噛み潰したような表情で、時貞が呟く。

「仔細は俺もよくは知らぬ…来客があり、悲鳴が聞こえた…俺がすぐに玄関に駆けつけると…既に蘭花の姿も、来客の姿もなかった。慌てて周囲を探したのだが、蘭花の姿は見当たらず…一時間ほどして一旦洋館に戻ると…蘭花が倒れていた…そのような酷い手傷を負わされてな…」

「……」

ジルコーの時と証言が似ている。

時貞はジルコーとほぼ互角の腕を持つ剣豪だ。

いくら不意打ちでも、そう簡単に不覚は取らない筈。

その時貞でさえ、敵の姿を捕捉する事は出来なかったというのだ。


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