魔女の瞳Ⅳ
もう駄目だ。

呼吸が止まる。

気絶する寸前で。

「か…はっ…ぐはっ…!」

菊花は水から引き上げられた。

酸欠で顔が蒼白となる。

死に物狂いで酸素を取り込もうと大きく息を吸ったところで。

「がはっ!」

みぞおちを思い切り蹴り上げられた。

ホプキンスの硬いブーツの先が、腹に突き刺さる。

体がくの字に折れた。

そこで再び水の中に頭を押し込まれる。

結局殆ど酸素は吸えていない。

肺は空のままだ。

再びの地獄。

意識が飛ぶ寸前まで水槽の中で死の淵を味わい。

またも一瞬だけ酸素を与えられ、また水中に引き戻される。

あの世とこの世を往復している気分だろう。


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