しぃぴぃ~彼は年上のCPが好き?~

6.たった一言、言いたくて

戸町支店のセール期間は、本当に忙しかった。

いつもの倍近くのお客さんを接客しなきゃいけなかったし、本や文房具の陳列場所も勝手が違っていて、中々難しい。

戸町ヘルプの1日目が終わった時のあたしは、帰宅後もうクタクタだった。

自室のベッドの上で仰向きになり、ふぅーっと溜息をつく。

「今日は、疲れたなぁ。」

……加村さんも、こんな風にグッタリなんだろうか。

慣れた様子で仕事をする彼は、疲れを少しも表情に出していなかった。

(電話、掛けちゃ駄目かな。)

加村さんのことを思うと、急に声が聴きたくなった。




ドキドキ。ドキドキ。




……もう、5分間も携帯の画面とにらめっこしている。

ディスプレイには、「加村悠輝さん」の文字と、彼の携帯番号。

「お、『お疲れ様です』っていうだけなら!」

短く挨拶して、すぐに通話を終わらせれば良い。

そうやって、無理矢理自分を納得させて、あたしは人差し指を使い、080で始まる11桁の数字をタップした。

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