「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

しあわせなひととき

 さっそく食事をいただいたけど、侯爵家とは思えないほどシンプルな料理で驚いてしまった。

 野菜が中心で、素材の味をいかした健康的なメニュー。それでいて、上品だし美味しすぎる。

 わたしにはぴったりのメニューだわ。

 品数も量もちょうどいい。
 侯爵とバルナバは、量を多くしているところが侯爵家の料理長の気遣いね。

 食事中も侯爵家一家のお喋り、というよりかは言い合いが止まらない。

 それをきくのがまた楽しすぎる。

 かといって、わたし一人が浮いているわけではない。要所要所に話を振ってくれたり、質問を投げかけてくれたり意見を求められたりする。

 そういうとき、なんの気兼ねもせずに答えたり述べたり出来ることが自分でも驚きである。

 これまで、なるべく人とは話さないようにしていた。まぁそんな気遣いをしなくても、そういう機会はほとんどなかったのだけれど。

 それでも、周囲はわたしを貶めようとわざと話をしてくることがある。そんなときは、うつむくだけにしていた。そうして、結局は「言葉を知らない役立たず」と貶められるんだけど。

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