「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

落ち着かないときをすごす

 舞踏会当日まで、落ち着かないときをすごした。

 大好きな乗馬や読書をしていても、気がついたら舞踏会のことをかんがえてしまっている。

 フィオレやアーダ、ジェラルドや皇宮のほかの使用人たちが、あれこれと話しかけてくれたり世話を焼いてくれたりする。それから、エルマと乗馬をしたりお茶をしたりする。
 そのお蔭で、ずいぶんと気が紛れた。

 結局、エルマはわたし同様パートナーなしで出席するらしい。

「予定していた伯爵子息が、別の貴族令嬢と出席したいからと言って断ってきたの。たぶん、お父様とお兄様が裏で手をまわしたのよ。ドスケベなだけで中身のない、その伯爵子息のことが気に入らないから」

 エルマは、皇宮の庭園でクッキーを頬張りながら言った。

 乗馬を終え、戻ってきたところである。
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