「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「おやつにお召し上がりください」

 皇宮の女性パティシエが、可愛らしくラッピングされたクッキーを手渡してくれた。

 男性ばかりの厨房で活躍しているそのパティシエを、わたしは尊敬している。

「亡くなった父の背を見て育ちました。独り立ちする前に亡くなってしまって。せっかく父とおなじく皇宮の厨房でのお仕事をいただいたのです。いつか父を超えるパティシエになる、というのがわたしの夢なんです」

 食堂でみんなで夕食を食べているとき、彼女が話してくれた。

 わたしとおない年の彼女の瞳は、うらやましいくらいキラキラ輝いていた。


 とにかく、エルマと二人で彼女の自慢のクッキーを堪能した。

 庭園は、ちょうどダリアが咲き誇っている。

 赤色や白色、黄色やピンクやオレンジ色。
< 125 / 175 >

この作品をシェア

pagetop