「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 たしか、ダリアには「栄華」や「威厳」や「優雅」というポジティブな花言葉と、「裏切り」や「気まぐれ」や「移り気」というネガティブな花言葉があったはず。

 こんなわたしは、いつだってネガティブな花言葉がお似合いよね。

「ナオ。だから、舞踏会はいっしょにいましょうね。皇宮の大広間で行われるんですもの。料理もスイーツも、たくさんの種類があるに違いないわ」

 エルマは、可愛らしくラッピングされている袋からクッキーをつまんでは口に放り込んでいる。

「エルマ、わたしに気を遣ってくれてありがとう」

 彼女は、口ではそんなことを言っている。だけど、パートナーのいないわたしに気を遣ってくれているに違いない。

 それがわかるだけに、申し訳なさが募る。

「そんなことないわよ、ナオ。かんがえすぎ、かんがえすぎ。ほら、あなたも食べて。そうじゃないと、全部わたしが食べてしまうから」

 言われるまま、クッキーをつまんで口に入れる。

 ほのかな甘さと、アーモンドの香ばしさが口の中に広がる。

 美味しい。

 単純だから、これだけですごくしあわせな気分になることが出来る。
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