「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「まぁまぁ、デボラ。彼女の過去をここで言ったところで、だれも関心を持たないさ。どうせ取り沙汰するなら、パートナー必須の舞踏会にお一人様で参加している件についての方がよくないか?」

 ジルドが、助け舟を出してきた。

 まぁ……。

 残念なデボラの彼氏もまた残念なのね。

 それにしても、皇子だから左竜将軍でいられるんでしょうけど、「ほんとに大丈夫なの?」って思ってしまうわ。

 彼は邪悪なばかりか、残念でもあるのね。

 周囲の人たちも、蔑みというよりかは気の毒そうな表情で彼を見ている。

「やめないか、デボラ」

 そのとき、宰相が悠然とやって来た。

 それから、得々とわたしについて述べはじめた。

 当然、非難である。遠まわしに、だけど。
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