「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 フランコは、銀の仮面をかぶっている。

 ということは、彼はいま本気なわけね。

 以前きいた、銀の仮面にまつわる話が思い起こされる。

「これはいったい、なんの騒ぎだ?カスト、おまえは知っているか?」
「さあ、なにも知らされておりません。陛下のいらっしゃらない間に、舞踏会の予定はいっさいなかったはずです」

 フランコの問いに、カストが答えた。

 しばらく会っていないけれど、銀仮面のフランコはあいかわらず威厳があるし、カストは可愛すぎる。

「バル、どういうことか教えてもらおうか?おれのあずかり知らぬところで舞踏会が行われ、大切な客人が貶められていることについてな」

 フランコは、銀仮面の下から宰相をにらみつけた。それから、側近のバルナバに尋ねた。

 人々をかき分け、バルナバが現れた。

「はい、陛下。宰相閣下から、『陛下の大切なお客人であるバトーニ伯爵令嬢の歓迎会を行いたい。すでに陛下から賛同を得ており、ジルド皇子も出席される』ときいております。ですので、念のため陛下に照会の使者を送りました」

 バルナバが答えた。

 大広間内は、異様なほど静まり返っている。

 フランコが現れるまで演奏されていた音楽も、当然中断されてしまっている。
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