「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「あの……」

 馬車に揺られながら、隣で手綱を握っている兵士が言いかけた。

「カスト・ベニーニです。一応、右竜将軍です」

 彼は、そう言ってペコリと頭を下げた。

 いままで、緊張や不安で彼の兜の下にある顔をよく見なかった。眩しい陽光に目を細めつつよく見てみた。

 か、可愛い……。

 こんな、って失礼よね。可愛いし、小柄でまだ若いのに右竜将軍?それがどれほど凄い地位かはピンとこないけれど、まず将軍というところで「おおっ」ってなっていいわよね?右、ということは左も存在するわけで、たいていは左右で竜帝の右腕と左腕をあらわす称号よね?

 だったら、この可愛いお坊ちゃんってすごいんじゃない?

 もっとも、皇族とか上位貴族だったら、あたえられて当然の地位かもしれないけれど。

「ナオ・バトーニです」

 すこしだけ緊張がほぐれたような気がする。

 ニッコリ笑ってみた。だけど、ひきつった笑みになってしまった。

 カストと目が合った。

 すると、彼は真っ赤になって慌ててそれを伏せてしまった。

 か、可愛すぎるわ。

 実際の年齢は、わたしとおなじくらいか上のはず。だけど、小柄で童顔だから、年少に見えなくもない。
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