「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「あなた、勘違いしているわ。なんてことなのかしら。陛下、あなたにゾッコンよ」
「はい?そんなわけはないわよ」
「あるのよ。彼、あなたと食事をしたり本を読んだりしたわよね?」
「ええ」
「それよ、それ。あぁイヤだわ、ナオ。あなた、彼をすっかり虜にしちゃって。陛下、ちゃんと話をしていた?あなたの目を見て話しをしたり、あなたの話をきいてくれた?」
「ええ」
「よかったわ。あなたにすっかりゾッコンだからこそ、彼もがんばっているのね」
「ちょちょちょっと、意味がわからないわ」
「あらやだ。約束の時間だわ」

 エルマは当惑しまくっているわたしを置いてけぼりにし、扉の方に駆けて行った。

「いまからカストと朝の乗馬なの」

 彼女は扉を開けて出ようとしたタイミングで、顔だけこちらに向けてウインクをした。

 そして、出て行ってしまった。
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