「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 というよりか、こんなに可愛い顔の男性って見たことがないわ。

 それが顔を真っ赤にして恥ずかしがるなんて、ずるくないかしら?

 いやだわ、わたしったら。

 まるでおばさんよね。まだそんな年齢じゃないはずなのに。しかも、家族や仕えていた(あるじ)やその他もろもろから捨てられたばかりなのに、そんな呑気なことを言っている場合じゃないのに。

 そうよね。呑気なことを言っている場合じゃないわ。

 王都だけでなく、このアロイージ王国そのものが貧困に喘いでいる。

 わたし(・・・)が守ることが出来るのは、天災や悪意ある脅威に対してである。だから、人間(ひと)のあらゆる欲からこの国やこの国の民を守ることは出来ない。

 たとえわたしが守護を続けようと、この国は遠からず滅びてしまう。

 欲深き特権階級によって……。

 ついさきほど通過してきた王都も、人々だけでなく王都じたいが力を失っていた。

 気力や活力、生命力、すべてが失われている。

 それを、わたしはこの目に焼き付けた。

 そのすべてを忘れない為に。
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