「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「ありがとう」

 彼がささやくように言った。

 いつの間にか、エルマとカストはいなくなっていた。

 あとで知ったことだけど、フランコはエルマとカストに激励を受けながらわたしのいる客殿にやって来たらしい。

 エルマはわたしの部屋を出て行くときにカストと約束があると言った。だけど、二人は約束していたわけではない。わたしの部屋に来るまでに会っていたのである。その上で、フランコとわたしの為にお膳立てをしてくれたのだ。

 さらに知ったことだけど、フランコは自分がドラーギ国に行く前にエルマとバルナバにわたしのことを託したらしい。

 自分がいなくなると、デボラや宰相がわたしにちょっかいを出すことはわかっている。だから、守ってくれるよう頼んだという。
< 161 / 175 >

この作品をシェア

pagetop