「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「厩舎を任されています、ガリレオ・ブランカです」
「はじめまして。ナオ・バトーニと申します。それから、愛馬のルーポです。そちらの馬、すごく速そうですね」

 彼が連れている馬に視線を送った。

「竜帝の愛馬でルーナです。ルーポ?狼、ですか?」
「ええ。彼とわたしが出会う前の話なのですが、彼が仔馬のときに放牧場に侵入した狼たちを蹴ったり追いかけまわしたりして、最終的に狼たちを追い払ったらしいのです。その逸話をきいて、ルーポと名付けました。だからといって、けっして気性が荒かったり暴れたりなんてことはないのですよ」

 言い訳がましかったかしら?

 だけど、ルーポはほんとうにおとなしくっていい子なんですもの。先入観で扱われてしまったら可哀そうですものね。

「どうかご心配なく。わたしも馬の面倒をみるようになって三十年は経っています。馬の目を見れば、おおよそわかります。どうやら、ルーポはこのルーナに負けず劣らずいい馬のようです。走りも性質(たち)もね」

 ガリレオは、そう言うとニッコリ笑った。

 えくぼがとっても可愛い。

 彼になら、安心してルーポを任せられるわね。

 ルーポの手綱を彼に任せると、ルーポはすぐに彼の頬に鼻をフニフニした。

 この鼻のフニフニは、たまらなく気持ちがいいのである。

 ガリレオにルーポのことをあらためてお願いをし、厩舎を後にした。
< 22 / 175 >

この作品をシェア

pagetop