「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「つい先程まで眠ってしまっていました。昨夜、お会いしたままの恰好でです。寝台の寝心地があまりにもいいものですから」
「それはよかった。昼食はもう終わっているね?もしよければ、いまから皇宮内を案内しようと思っているんだが。もちろん、厩舎にもよるつもりだ」
「ほんとうですか?ぜひ、お願いします」
「では、さっそく」

 皇族の所有する敷地はかなり広く、テラスから見える森も当然その一部。皇宮内のすべてをまわるには、数日かかるらしい。

 だから、普段かかわりのありそうな所だけ案内してくれた。

 大広間に謁見の間、大食堂や小食堂、サロンや大きな居間、客殿や議場、それから厨房や庭園。そして、自慢の大浴殿。だけど、大浴殿は有事の際にしか使用しないらしい。

 帝都で何かあった場合、帝都民に開放するのだとか。
 ただ、いまのところはそういう機会はないらしい。

 それにこしたことはないわよね。

 図書室は最後にというわけで、庭園から厩舎に向かった。
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