「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「ナオ。その、友達だったら、おれも……」

 右横に立っているフランコが、何か言いかけた。

「陛下っ!そろそろ二頭に飼い葉をやりたいんですがね」

 だけど、ガリレオの怒鳴り声で中断されてしまった。

「ああ、頼む」

 フランコを見上げると、彼の美貌に拗ねたような表情が浮かんでいるような気がした。が、それも一瞬のことだったから、気のせいだったのかもしれない。

「そうだ。ナオ、近いうちに遠乗りに行こう。皇族の領地に景色のいいところがあるんだ。湖を見渡せる丘に、思いっきり駆けることの出来る草原だ。ルーナのお気に入りの場所でもある。森に行けば、いまの時期ならベリー狩りが出来る。昼食持参で一日羽を伸ばそう」

 薄暗くなってきているのに、フランコの笑顔が眩しい。

 気を遣って誘ってくれているのはうれしい。だけど、彼は忙しいはず。わたしなんかの為に時間をムダにさせてしまっては申し訳がない。

「フランコ様、お気持ちはありがたいのですが……」
「おお、それはいい。ルーナとルーポも大喜びしますよ。もちろん、ご令嬢も」
「ブルルルルル」
「ブルルルルル」

 お断りしようとしたのに、ガリレオとルーナとルーポに邪魔をされてしまった。
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