「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
 公爵令嬢の父親、つまりガンドルフィ公爵は宰相らしい。その地位を強固にするため、娘を嫁がせようとした。もちろんフランコに、である。

 婚約者にしようとした。

 フランコは断った。そのつもりはない、と。だけど、宰相はあきらめなかった。もちろん、娘もあきらめなかった。あの手この手で迫った。

 政治的なこともある。政治的な権力を握る宰相の娘を無碍にするわけにもいかない。それに、軍事的なこともある。左将軍ジルド・ベニーニはフランコとカストの異腹の兄で、そのジルドの母親が宰相の姉の夫の妹のいとこの夫の母方の祖母の孫にあたるらしい。
 その関係を、五回ききなおしてしまった。でも、結局覚えられなかった。途中から、適当になっていると思う。っていうか、教えてくれたジェラルドも繰り返す度に微妙に違っていたような気がした。たぶんそれは、わたしの気のせいね。

 っていうか、それってほぼ他人みたいなものじゃないのかしら?

 とにかくそういう血縁もあり、宰相が左将軍ジルドの後ろ盾をしているらしい。

 それと、後ろ盾をしているもっと重要な理由があるらしい。

 それはともかく、フランコは、デボラの猛烈なアタックとその父親の宰相からの政治的圧力から、仕方なく婚約をした。おりをみて、何か理由をつけて婚約を破棄するつもりだったらしい。

 だけど、ほどなくして婚約は破棄された。
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