「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

侯爵令嬢エルマ・ボルディーガ

「あらためて、エルマ・ボルディーガよ。エルマって呼んでね。ナオって呼ばせてもらってもいいかしら?よろしくね」

 エルマはフォークを置き、つぎはクッキーをつまんだ。クッキー(それ)を口に放り込むと、こちらにその手を差し出してきた。

「もちろんです。ナオ・バトーニです」

 手を差し出して彼女の手を握ろうとすると、指先にクッキーのクズがついている。

「いやだわ」

 彼女も気がついたみたい。慌てて乗馬服に指先をこすりつけてクズを払った。

「あ、口許には生クリームが」
「ああ、まるで子どもみたいよね」

 思わず、控えめに注意をした。ニヤニヤ笑いをしながら、だけれども。
 そうすると、彼女はさっき払ったばかりの手で口許を拭った。
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