「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~
「ちょっとお兄様、わたしには手を貸してくれないわけ?一応、わたしもいるんですけど」

 そのとき、馬車の中からエルマが顔をのぞかせた。

「おっとすまない、愛する妹よ」

 メガネの青年は、わたしにウインクをすると慌ててエルマに手を差し伸べた。

「ナオ、兄のバルナバ・ボルディーガよ」

 彼女は、にこやかに紹介してくれた。

「おれは、バルナバ・ボルディーガ」
「ナオ・バトーニです」
「陛下より、機会があればご挨拶するようにと。それと、何か困ったことがあれば力になるようにとも命じられていたんだ」
「ありがとうございます」

 エルマのお兄様なのね。

 だから、雰囲気が似ているのね。

 美男美女の兄妹だなんて、うらやましいわ。
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