世界で一番いい女
「あぁ、たっちゃんのこと?」
「たっちゃん?」
ふーん?
あだ名呼びなんて、すげー親しく呼ぶじゃん。
俺はいまだに”岩清水くん”なのにな。
「たっちゃんは近所に住んでる従兄だよ」
「へぇー」
ただの従兄の割には距離が近かったと思うんですけど。
あんまりおもしろくない事実に、俺の理性がゆるんだ。
もじもじと下を向いている羽生の顔を無理やり上に向かせ、俺と視線を合わさせる。
「い、岩清水くん……! 急にどうしたの……?」
途端に慌てふためいて、顔を赤く染める羽生。
耳や首元にまで熱を散らしているのが可愛い。
「従兄の前でもこんな顔してたけど、どんな話をしてたんだ?」
俺に見下ろされるのがよっぽど恥ずかしいみたいで、羽生は必死に抵抗を続ける。
当然、男である俺の力の方が勝つから、抵抗は無意味なんだけども。