世界で一番いい女
「そ、れは。従兄が”羽生の彼氏、かっこいいね”って褒めてくれたから……嬉しくて」
今にも空気に掻き消えそうな小さな声。
俺がしっかり上に向けていたおかげで、その小さな音を拾えた。
「俺の話すると、顔赤くなんの?」
「ネガティブなことじゃなかったら大体そうなるかなぁ。岩清水くんはかっこよくてなんでもできちゃうから……んっ!?」
なんでいつもこんな直球で褒めてくるんだ?
これ以上聞いてると、こっちの顔が赤くなりそうだわ。
かっこ悪いところを見せる前に、しれっと唇を塞ぐ。
羽生の口はちっちゃくて、このままうっかり食べてしまいそうになるほど。
ここは学校。もうしばらく我慢。
自分に言い聞かせてなんとか理性を保つ。
「今だけでいいから。俺のこと、名前で呼んで」
「ゆう、きくん……」
微妙に息を切らしながら、俺の名前を呼ぶ羽生。
上目遣いなの、ずるくね?
可愛くて、かっこよくて、強い。
俺の彼女は、世界で一番いい女。