世界で一番いい女



 あいつと出会うまで、来るもの拒まず去る者追わずだった俺。


 そもそも、モテるっつっても俺のスペックを求めて近寄ってくる女ばっかりだったし。


 『七海学園に行くから別れて』っつったら『わかった』って返ってくるレベルだったし。


 それに関してムカつくとか、悲しいとかなんの感情もわかなかった。


 俺の心が揺れるのは、羽生の前だけらしい。


 タイプじゃねーのに可愛く思えて。


 めんどくせーのに別れるのはいやだなって。


 俺自身の変貌(へんぼう)ぶりに笑っちまう。


「勇気~。おひさ! なにしてんの~?」


 二人の尾行(びこう)を続けていると、後ろから肩を軽くたたかれた。


 聞き慣れた声は、振り返らなくても誰かわかる。


「みく、来てたのか」

「そりゃ元カレがいるんだから来るに決まってんじゃん~? 去年も楽しかったし!」 

「そう。じゃ、楽しんで」


 そう言って立ち去ろうとしたそのとき。みくに腕をつかまれ、引き留められた。


「いくらなんでも塩対応すぎるでしょ! 案内くらいしてよ!」

「俺今すげー忙しいんだけど」

「暇そうに一点を見つめてただけじゃん。私と回ろうよ~」


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