世界で一番いい女



 周りから見たら逆ナンにも見えるこの状況。


 案の定、周囲の生徒がざわざわと騒ぎ(さわぎ)出す。


 すると、目立ち始めたこちらを振り返った羽生と目が合って。


「っ!」


 傷ついたような表情をした羽生は、男と共に人混みの中に消えていった。


 ……最悪。変な勘違いをされただろ、絶対。


 みくはたしかに昔タイプではあったけど、今はなんでもない女だっつーのに。


「俺行かなきゃいけねーからマジで離して」

「なに必死になってんの? あの子、勇気の元パートナーだっけ?」

「そーだよ。必死になるほど惚れてんの。離さねーなら容赦(ようしゃ)なく振り払うけど、どうする?」

「っ、勇気って変に変わったね!」


 捨て台詞を吐かれた。だけど、気にする余裕なんてない。


 羽生たちが行った方へ走ったけど、にぎわう学園祭で見つけるのは困難(こんなん)で。


 苛立ちを壁にぶつけそうになったそのとき。


 ―――ピンポンパーン


 カップルたちを呼び出す放送が鳴った。


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