恋の花
私の名前は瀬戸光(せとひかり)。高校一年生。
今日からここ、一攫千金婚校と言われる七海学園で、最高の青春を見つけたいと思います!
勉強が苦手な私が、めっちゃ頑張ってこの学校に来た理由。それは.....
あ、ここが私の部屋か。
そんなことを思いながら歩いていると、私の名前が書いてある部屋に着いた。
ここから始まるんだ。私の三年間が!
あ、名前書いてある。えーと、私の名字の瀬戸と、南雲くん?
もう来てるかな?
ピーンポーン
はーい。という声がインターホンから聞こえる。
なんか、聞いたことある声?
ガチャ。と、音がして私よりずっと背の高い男の子がでてくる。
少し見上げて顔を見ると、そこには慣れ親しんだ顔があった。
「南雲、陽くん?え、陽だ!
久しぶり!中学の卒業式以来だね。」
彼は南雲陽(なぐもはる)。小学校、中学校と一緒の地元仲間。
クラスも同じになることも多く、男子の中では仲の良い方だった男の子。
「え、光?まさか、え?
あ、ごめん。知ってる人だとは思わなくてさ。」
「私も今すっごくビックリしてるもん!
これからよろしくね!」
「うん。でもまさか光がこの学校へ来るなんて思わなかった。だって光さ、律と付き合っ......」
ピンポンパンポーン
「もうすぐ入学式が始まります 生徒の皆さんは体育館に移動してください」
「行こっか。陽。」
私がこの学校に来た理由。
私には中学の時、小学校から片思いして、ずっと追いかけてきた、幼馴染の律って男の子がいた。
誰にでも優しくて、友達からも先生からも愛されてる。
そんな律を尊敬していて、大好きだった。
何回か振られちゃったけど、律には何ども告白して、やっと律の彼女になることができた。
でも、お互いに部活が忙しくて、結局デートにも行けず、そのまま自然消滅。
私の初めての両思いは10ヶ月で終わった。
忙しいのは本当だったけど、私がちゃんと時間を作ってれば会えたのに。
何かと理由をつけて、ちゃんお向き合おうとしなかった私が悪い。
律が悪いんじゃないから、別れたいって言われた時は、何にも言えなかった。
でも、やっぱり私は律のことが大好きだから、最後にもう一度告白したけど、今は恋はできないと断られてしまった。
そんな時、ここ、七海学園のことを知って、運命の人に会えば、この恋の辛さも乗り越えられるんじゃないかって思った。
正直今でも律のことはずっと心に引っかかってる。でも、運命の人、陽となら。
この三年間で、きっと乗り越えられる。
そう、信じてる.....
そして、数日後、初めてのカップルイベントが行われた。
「え、この風船、ハグしながら割るの!?」
「そ、そうみたい。俺、女子とそんなことやったことないんだけど.....。」
「わ、私もだよ!き、緊張するけど、やるしかないよね!」
「お、おう!恥ずかしいから、目、瞑ってて。」
私は言われた通りに目を瞑る。
なんだか変なところに力が入ってる気がする。
え、これ大丈夫かな?
心臓の音、聞こえちゃってるかも。
それになんか手汗かいてきたし....
陽......早くして......
「光。」
パン!
耳元で名前を呼ばれて、抱きしめられたと思ったら、風船が割れた音で、パッと目を開けた。
思わず顔が赤くなる。
「は、陽。耳真っ赤だね!」
自分の顔を隠すようにして、気まずくならないように話題を回す。
「はは。光も顔真っ赤だよ。
あ、質問出てきた。えーと。」
早くこの恥ずかしさから抜け出したくて、陽は素早く質問カードを拾う。
何が書いてあるんだろう?
好きな食べ物とか、王道系だと嬉しいなー。
「質問読むね。なぜこの学校を選んだの?だってさ。
なんか面接みたいだな。
でも、聞きたかった。」
笑いながらも真剣そうな声で陽が言う。
そうだよね。私律と付き合ってたんだもん。
陽は多分そのことを気にしてる。
いつかは、話さなきゃって思ってたけど、
今が、そのタイミングなのかも。
「律とは別れたけど、まだ好きって気持ちは残ってたの。
だから、運命の人に会ったら、前に進めるかなって思ったんだよね。」
なんか、すごく今更だけど、律のことを思い出したら、泣きそうになっちゃう。
だめだめ!前向かなきゃ。
「陽は?どうしてここに来たの?」
「俺も光とほぼ同じ。小学校から好きな人に彼氏ができて、諦めきれなかったから、運命の人に会いに来た。」
私も、メガティブになってたけど、これからゆっくり時間をかけて陽と向き合っていけば、きっと、陽のことを好きになれる。
陽のことはまだ、恋愛としては見れないけど、「好きになりたい」って、私の心が言っている。
「なあ。せっかくだからもう一個くらい割ろうぜ!」
陽が風船を持ってきて私に差し出す。
そうだよね。そこまで金の夫婦の卵を狙っていない私たちだけど、ちゃんとゲームには参加しないと。
「やっぱり恥ずかしいから目瞑って。」
「は、はい!」
「ありがとう。」
なんだかさっきよりも緊張するのは、きっと私が、パートナーが陽で良かったって、心の底から思っているから。
そして抱きしめられる。さっきよりも優しくて強い力で。
「光、俺頑張ってさ、光の心の中の不安とか消せるように頑張るわ。
パートナーが俺で良かったって思ってもらえるように。」
私は思わず目を開いて、一筋の涙をこぼす。
「優しいね。陽は。
これからもよろしくね!陽。」
胸がドキドキしている。
この胸のドキドキが好きって気持ちなのかはまだ分からないけど、
いつか、分かるといいなー。
パン!
そして二つ目の風船が割れ、質問カードが出てくる。
今度は私がお題を読み上げる。
「えーと。好きな食べ物は?だって。
あ、私陽の好きな食べ物知ってるよ!」
「俺も知ってる。一回二人で語り合ったもんな!」
「じゃあ行くよ、せーの!」
「「オムライス!!」」
そして私たちは、今日一番の笑顔で笑い合った。
高校一年生 初めての夏休み
お互い夏休みは、基本的には実家に帰って、久しぶりの家族の時間を過ごしていた。
家は近いからたまに会ったりはしたけど、周りのカップルがやっているようなことはまだ特にはしてない。
そして夏休みが終わる5日前、私たちは寮に帰ってきた。
「ただいまー。」
私たちは二人揃って、2週間ぶりくらいの部屋に挨拶する。
今日は8月19日か、もうすぐ学校始まるなー。
でも、なんか忘れてるような?
うーん。あ、そっか!
「明日、陽の誕生日じゃん!」
わー。何で今日思い出したんだ私。
今更プレゼントとか用意できるかなー?
私のバカ!
「覚えてくれてたんだね。俺の誕生日。
覚えてくれてただけで嬉しいよ。」
陽はそう言ってくれてるけど、何にもしないのは流石にどうなのって感じだよね。
普段いっぱい陽にはお世話になってるから、何かはしてあげたい!
あ、いいこと思いついた。
「陽。明日1日、私なんでも陽のお願い聞く!
オムライス作って欲しかったら作るし、何か欲しいものがあったらプレゼントする!」
「気持ちは嬉しいけど、本当になんでもいいの?」
「もちろん!」
「じゃあ、明日一緒に出かけようよ。
ちゃんと2人で出かけたことなかったからさ。」
「そんなのでいいの?私はいいけど。」
「嬉しい!じゃあ、海行きたいな!」
なんか珍しく陽がはしゃいでる。
難易度的には小さい子が渡すなんでも券的な感じだけど、嬉しそうだからいっか。
「うん!明日楽しみにしてるね!」
と言ったらいいものの、私も人生初デートだ。
服とか何着たらいいか分かんないし、
やっぱり女の子っぽくスカートかな?
でも歩きやすい服の方がいいって聞いたことあるしな。
あー。頭が回って分かんなくなってきた。
だれか、恋愛上級者の友達いたっけなー?
ピーンポーン
誰だろう?
「陽、私出るよ!」
私がドアを開けると、隣の部屋のあゆちゃんと梶くんがいた。
「光ちゃん!この前カジカジと遊園地行ってきたんだぁー。その時のお土産!
いつも仲良くしてくれてありがとう!」
「わー。ありがとう!美味しそうなお菓子!」
恋愛上級者.....。
あゆちゃんたちだ!
「あゆちゃん、梶くん、少し質問があるんですけど........。」
そして翌日
「光ー着替え終わった?そろそろ行くよー。」
「ちょっと待って!」
急いでカバンを持ってロフトから下に降りる。
急いで下に降りると、陽がビーチボールをカバンに入れながら待っていた。
不意に私の方を見て固まる。
「待たせてごめんねー。って、なんか陽顔赤いよ?熱あるんじゃない?」
「いや、その、大丈夫!早く行こうぜ。」
今日はあゆちゃんたちに教えてもらった極意をもとに、陽にとって最高な1日になるように頑張ろう!
今日の私は、花柄のロングワンピースで大人っぽく見えるようにしつつ、海ということで髪の毛はシンプルなポニーテールにしました!
そして駅から電車に乗り、30分ほど乗ったところで駅に到着。駅を出るとすぐに海が広がっていて、海の匂いが漂っている。
「着いたねー。私海なんて久しぶり!」
「俺もだよ。じゃあ早速着替えて遊ぶか!」
「うん!」
水着はあゆちゃんにビキニをお薦めされたんだけど、流石に恥ずかしくて、ラッシュガードを肌身離さず着ていることにしました。
なんか陽が残念そうな顔をしてる?
ここにくる前も顔赤かったし、今日の陽はなんか変?
まあいっか。せっかく来たんだしいっぱい遊ぼう!
考えすぎは良くないしね!
「陽行くよー!それ!」
「おう!ほれ!」
まずは波打ち際でビーチボール!
陽はバレー部だったから、多少私が変なボール返してもプレーが続く。
結構長い時間が経った頃、私たちは砂でお城を作っていた。
「陽。お城ってほんとに作れるの?」
「おう!とりあえず土台から固めていくぞ。」
なんか陽真剣な顔してる。
陽って一度やり始めたら最後までやり遂げるタイプなんだ。
そうゆう人。好きだなぁ。
「おーい!兄ちゃんたち!
俺らも混ぜてくれよー!」
私がぼーっとしていると、近くで遊んでいた子供たちが近くに駆け寄って来て、一緒にお城を作ることになった。
そしてみんなで力を合わせて作業を続けると、、、
「できたー!」
私は不器用だけど、陽は器用。そして柔軟な頭を持った子供たち。
いい組み合わせで結構立派な、私の身長の半分くらいあるお城ができた。
私が150ちょいだから75センチくらいかな?
お城作りに熱中していたら、いつのまにかお昼時。
一緒にお城作りをしていた子供たちとも別れて、来た服に着替えて、近くで見つけた食堂に入りました。
「俺カツ丼一つください!」
「私は海の幸丼ください!」
私たちがちょうど入ったこの食堂は、海が見えるすごく素敵な食堂で、お店のご夫婦もすごく優しそう。
「美味しい!こんなに美味しい丼もの食べたことないかも!」
「俺もこんな美味いやつ食べたことないかも!光のも美味しそうだな!」
「美味しいよー。でも私もカツ丼と迷ったんだよね。ねぇ、一口もらってもいい?」
「あぁ。ほら、ちょっと待ってな。
はい!あーん。」
ん?ちょっと待って待って待って。
あーん。ってあのあーん?
あの恋人同士とかがやるあのめっちゃ顔近くなるやつ!?
私が思ってたのは私が陽のお椀から自分のスプーンでもらうって感じだったんだけど!
私そんなことやったことない!!
絶対顔赤くなるー!
けどここで断る方が気まずくなるし陽にも悪いか。これはやるしか無い!
(ここまで約1秒)
「い、いただきます!」
パクッ
美味しい....。私が目を開くと、案の定陽のきれいな顔が目の前にあった。
二人して顔を赤らめる。
「あらあら。お若いお二人さんは幸せそうねー。」
バッと二人して遠ざかる。
良かったぁー。危うくタイミング逃すところだったよ。
「あ、ど、どこか行きたい場所ある?
まだお昼だし、寮の門限までもまだあるし。」
「そうだなぁー。森....かな?」
森?海に森ってそんなに自然と触れ合いたかったのかな?
「いいよー。じゃあ、食べ終わったことだし行くか!」
「おう!あ、お会計お願いします。」
「はーい。ありがとうねー。」
「料理めっちゃくちゃ美味しかったです。
また来ます!」
礼儀正しいなー。
ってよくよく考えたら、顔もかっこよくて高身長で器用で店員さんにも礼儀正しくて優しいとか、彼氏だったら最高だなー。
欠点とかあるのかな?
あるとしたら......
「陽!森まで競争しようよ!」
「いいけど、光のほうが早いんじゃない?」
「そんなことないよ。よーい、ドン!」
たったったったった
「陽ー。なんか私たち、今めっちゃ青春してない?」
「そうだなー。海横目に全力疾走してるもんなぁー。
あ、ゴール見えて来た。あそこが入り口だってさ。」
そして森の入り口へ着いた。
森の中へ入ってみると、他の家族連れの人なども多く、いろいろな植物が私たちを出迎えてくれた。
「中は涼しいなぁー。まだ8月だっていうのにさ。」
「そうだね。森は確かに気持ちいけど、どうしてここに来ようと思ったの?」
「ちょっとマイナスイオン浴びたくてさー。」
たまに思うけど陽って天然なとこあるよね。
でも完璧すぎる人よりちょっと抜けてるとこある方がいいな。
「陽。私陽に渡したいものがあって。
これなんだけど.....」
私は鞄の中から昨日こっそり作ったミサンガを取り出して陽に渡した。
「ごめんね。私昨日思い出したものだから、ちゃんとしたもの用意できなくて。
来年はちゃんと渡すからね!」
「これ光が作ってくれたの?」
「え?うん。そうだよ。上手くできたかは分かんないけど、陽が笑って過ごせますようにって想いは込めたから、着けるのは恥ずかしくても持ってて欲しいな。なって思ったり。」
そういうと陽はにこっと微笑んでその場で足に結んだ。
「ありがとう。大事にする!」
良かったー。喜んでくれて。
昨日お店探してプレゼント買いに行こうか迷ったけど、私にできることにして良かった。
変に挑戦したらかえって失敗してたかもしれないし。
「.....かり.....ないよ」
うーん。この自然を見てすぐ帰ったら4時には家着いちゃうよねー。
もう少しどこかで一緒に過ごしたいなー。
「光!危ない!」
え.....
私は急に後ろから腕を引っ張られて倒れる。
ドサッ!
「光大丈夫?怪我はない?」
私が目を開けると、真上に陽がいて、どうやら私が尖った危ない草むらに無意識に行こうとしてたのを止めてくれたそうだった。
「あ、ありがとう!私ちょっと考え事してて。今度から気をつけるから。」
そう思って立ちあがろうとすると、右足に痛みがあって上手く立ち上がれない。
「足怪我した?ごめんな。俺が急に引っ張ったから。今日はもう帰ろうか。」
え、私のせいで帰るのはやだ。
どうしよう?あ、あの道の奥にカフェみたいな所ある?
「陽。私なら大丈夫だよ!それより森の散策してお腹すいちゃった。
あの奥のカフェ寄ってから帰ろう?」
私はすっと立ち上がる。
良かった。誤魔化せるくらいの痛みだ。
家帰って湿布貼ったらすぐ治りそう。
私たちはカフェの中に入ると、店内はいろいろな植物が飾られていて、綺麗なお姉さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくり。
今日は天気も良いので、外のハンモックもご使用いただけます。」
外のハンモックも気になるなー。
私たちは外のテラスに出てココアと小さなケーキを頼む。
そしてココアが着いて一息ついた頃、陽は急に真剣な表情になった。
「光に話しておかなきゃいけないことがあるんだ。」
「どうしたの?」
やっぱり真剣な話は何回聞いても緊張する。
「この学校に、律がいる。
クラスも違うし向こうの総合成績もそこまで高くなかったから今まで気づかなかったけど。」
この学校に律が!?
でも、なんでその話を陽はして来たんだろう。
「光。違ったらごめん。光はまだ、律に未練あるだろ?だから、もし光が望むなら、ペアのトレードを申請しても良いと思ってる。」
ペアのチェンジ?そうか、そんなこともできるんだ。
でも、律とは別れた時に終わったし、お互い今は別のパートナーがいるのに。
それに陽と過ごした今までを、無かったことにはしたくない!
「私は陽とペアを続けるよ。」
「え、いいの?せっかくのチャンスなのに。」
「私は陽がいいの。」
「ははっ。良かった。」
陽は安心して気が抜けたように手で顔を隠した。
「今日なら大丈夫な気がするから言う。
俺最初さ。好きな人に彼氏ができたからここ来たって言ったじゃん?
それ光のことなんだ。」
「わ、私?」
「本当はもっと早く言えれば良かったんだけど、光には律がいたからさ。
でも、今なら伝えられる。
俺は、光が好きだ。」
告白、なんてされたことないよ。
陽のことは好き。でも、恋愛として好きかって聞かれたら分かんない。
だけど、これからを一緒に歩いて行きたいのは、陽
その気持ちは変わんないと思う。
「私、正直に言うと、陽のことはまだ大好きだとは言えない。
でも、一番好きになりたい人で。
一番大切な人だよ。」
「やっと。振り向き始めてくれた。
ハグして良い?あの時みたいに。」
「うん。陽になら。」
ギュッ
もっと早く振り向いてあげられたら良かったのにな。
でも、これからだよね。
「これからもよろしくお願いします!」
「ありがとう。光。これからもよろしく!」
そして私たちは、私たちの家(寮)へと帰路に着いたのでした。