無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
学生時代の話をし始めたから単なる思い出話なのかと安易に構えていたけれど、そうではなかった。
これは今現在、志賀さんが心を痛める原因になっている話だ。
「ガンを患ってるらしい。余命宣告をされた、って本人が笑って言うんだよ。俺は驚いて絶句するだけで、励ますような言葉をかけられなかった」
「恩師の方が……大病を……」
「病気は怖いな。別人みたいに変わってた。あのころ鍛えてた筋肉は見る影もなくゲッソリ痩せて……」
悔しそうな表情で語る志賀さんを見ていると、彼がその先生を好きだったのがありありと伝わってきた。
厳しい一面があったとしても、先生のことを人間的に心から尊敬していたのだと思う。
頭の中であれこれ考えていると、急に鼻の奥がツンとしてきて、あっという間に瞳から大粒の涙がポロリとこぼれた。
「神野さん?」
「ご、ごめんなさい! もらい泣きをしてしまいました」
「いや、俺泣いてないよ?」
たしかに志賀さんの目から涙は出ていないけれど、心はずっと泣いている。それがわかったから、おそらく私に伝染したのだ。
「先生は……変わっていないと思います。見た目は昔と違うかもしれないけど、中身は同じですよ! 芯の部分では今も凛とされているんじゃないですか?」
グズグズと鼻をすすりながら勝手な想像を口にすれば、志賀さんは納得するようにうなずいた。
「泣いてくれてありがとな」
「いえ……」
「神野さんの言う通りだった。飲む気分でもなかったし、こんな話をするつもりもなかったけど、話してると重かった気持ちが少しだけ軽くなった」
よかったです、と言おうとしたが、喉が詰まったようになってうまく言葉が出てこない。
泣いている場合ではない。志賀さんをもっと元気づけなければ。
これは今現在、志賀さんが心を痛める原因になっている話だ。
「ガンを患ってるらしい。余命宣告をされた、って本人が笑って言うんだよ。俺は驚いて絶句するだけで、励ますような言葉をかけられなかった」
「恩師の方が……大病を……」
「病気は怖いな。別人みたいに変わってた。あのころ鍛えてた筋肉は見る影もなくゲッソリ痩せて……」
悔しそうな表情で語る志賀さんを見ていると、彼がその先生を好きだったのがありありと伝わってきた。
厳しい一面があったとしても、先生のことを人間的に心から尊敬していたのだと思う。
頭の中であれこれ考えていると、急に鼻の奥がツンとしてきて、あっという間に瞳から大粒の涙がポロリとこぼれた。
「神野さん?」
「ご、ごめんなさい! もらい泣きをしてしまいました」
「いや、俺泣いてないよ?」
たしかに志賀さんの目から涙は出ていないけれど、心はずっと泣いている。それがわかったから、おそらく私に伝染したのだ。
「先生は……変わっていないと思います。見た目は昔と違うかもしれないけど、中身は同じですよ! 芯の部分では今も凛とされているんじゃないですか?」
グズグズと鼻をすすりながら勝手な想像を口にすれば、志賀さんは納得するようにうなずいた。
「泣いてくれてありがとな」
「いえ……」
「神野さんの言う通りだった。飲む気分でもなかったし、こんな話をするつもりもなかったけど、話してると重かった気持ちが少しだけ軽くなった」
よかったです、と言おうとしたが、喉が詰まったようになってうまく言葉が出てこない。
泣いている場合ではない。志賀さんをもっと元気づけなければ。