無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「いいじゃん。女子力アップしてる」

 ミルクティーのように明るく染めた聖くんの髪にはウェーブがかかっており、服装もナチュラルなのにオシャレだ。
 サーフィンをやっているので肌の色は日焼けしていて浅黒い。左耳にはピアスが光っていて、めちゃくちゃ女子ウケしそうな容姿をしている。
 このカフェで知り合わなければ、私の人生とは絶対に接点がなかったタイプの男性とも言えるだろう。

「じろじろ見ないでよぅ。私に女子力はないけど、聖くんは相変わらずイケメンだよね」

「はは。そういうとこがかわいい」

 こうして聖くんはよく私をからかう。たしか彼のほうが二歳年下のはずなのに。

「元気ないね。この世の終わりみたいな顔してる。なにかあった?」

「うーん……大丈夫」

「いつでも言いなよ。俺、けっこう聞ける男だから。メッセージでもいいし」

 聖くん目当てでこのカフェに通う女の子も多いらしい。
 見た目もイケメンで、やさしさまで備わっているのだから、そりゃモテるに決まっている。

 しばらくボーッとしたまま時間を潰したあと、残っていたアイスコーヒーを一気に飲み干して席を立てば、聖くんがすぐさまレジの対応をしてくれた。

「ありがとね。ここに寄ってよかった。パワーもらえたから、今日はどんなに打ちのめされても生き延びてみせるよ!」

「え、気合入れないと死んじゃうくらいのことが待ってるの?」

「うん。うっかり気を抜いたらメンタルが即死する」

 眉根を寄せて答えた私の返事が、どうやら彼には大ウケしたようだ。
 聖くんはお釣りを渡しながらブハッと吹き出して笑った。

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