無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「なに食べる? 俺はハンバーグセット!」

「私も同じのにする。時間がなくてごめん」

「謝るなよ。俺も夕方までには帰らないといけないし、今しか時間が合わなかったもんな」

 せっかく会えたのにゆっくりと話す時間がなく、あまりにもあわただしくて申し訳なさが先に立った。
 だけど太一は、正月の帰省時にまた会えるだろと言って気にしていなさそうだ。

「洋食でよかったの? 太一は和食のイメージなんだけど……」

「俺だってたまには都会のうまいもんを食いたいって」

 笑いながら店員さんが運んできたグラスの水に口を付ける太一を見て、私も自然と笑みがこぼれた。
 彼の家は山梨で蕎麦店を営んでいて、私の実家からも近かったので子どものころから食べに通っていた。
 太一は父親の跡を継ぎ、今では二代目としてお店を盛り立てている。

「太一が打ったお蕎麦だって、めちゃくちゃおいしいよ」

「また店に来い。いくらでも食わしてやるから」

「うん」

 地元のことやほかの幼馴染の話をしているところへ、オーダーしたハンバーグが運ばれてきた。
 鉄板の上でジュージューと音を立てているのを目にしたら、急激にお腹が減ってくる。
「いただきます」と合掌したあと、太一はうれしそうな顔をしてハンバーグを豪快に頬張った。

「従姉妹さんの幸せそうな姿を見て、太一も結婚したくなったりした?」

「俺はないな。まだ二十五だし、独身のときしか遊べないからな」

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