無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
 お昼休みの時間になり、私は外にご飯を買いに行くためにオフィスを出た。
 食べたいものが決まらないので、行き先はとりあえずコンビニでいいかと考えながら、エレベーターに乗り込む。
 一階のボタンを押して扉を閉めようとしたとき、走ってくる人影が見えたので、あわてて隣にある“開”のボタンを長押しした。

「あっ!……」

 ギリギリのタイミングで滑り込むように乗ってきたのは、志賀さんだった。
 機内にはほかに誰もいないので、奇しくも狭い空間にふたりきりになってしまい、私にとっては思いがけないハプニングで息が止まりそうだ。
 
「お疲れ」

「お、お疲れ……さまです」

「なんでそんなにおどおどしてんの?」

 私は志賀さんの顔をまともに見られずに、ずっとそわそわしていたせいで話しかけられてしまった。
 あいさつと仕事以外の会話は久しぶりだ。
 盛大に緊張はするものの、心のどこかでうれしい気持ちもある。

「おどおどなんて……気のせいですよ!」

「ふぅん。どこ行くの? ランチ?」

「コンビニです。志賀さんは?」

 不用意に志賀さんのほうへ顔を向けたらバチッと視線が交錯して、スイッチが入ったようにドキドキと胸が高鳴ってくる。
 こうしてまた、自分の重症度を思い知った。

「俺は今から四方さんとランチに。ミーティングを兼ねてって言われたら断れなくてさ。あちらはクライアントだし」

「…………」

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