無茶は承知で、今夜あなたに突撃します
「ところで、今のは誰?」

「え? えーっと……聖くんは、私がよく行くハワイアンカフェで働いてる人です。送ってくれると言うのでお言葉に甘えちゃいました」

「ああ、彼か。中西さんがチラッと話してるのを聞いたことがある。カフェのイケメンくん、って」

 一時期佐夜子さんは私の好きな人が聖くんだと誤解していたから、休み時間に彼のことをしきりに話題にしていた。
 それが志賀さんの耳にまで入っていたのが意外で、私はまた驚かされた。

「ずいぶん仲がいいんだな」

「友達になってくれたみたいです。悩みごとを聞いてくれていました」

「部屋に上がり込まれてたかもしれないだろ。警戒心がなさすぎだ。相談なら同性の友達にすればいいのに」

 聖くんはそんな人ではないのに、と少し悲しくなった。
 それに、もし私の部屋でお茶を飲んで帰ったとしても、間違っても急に襲ったりはしないだろう。恋愛経験の乏しい私でもそれはわかる。

「私、こっちに友達がいないんです。社会人の友達ってどうやって作ったらいいかわからないんですよね……」

「……中西さんは?」

「佐夜子さんは、友達というより先輩ですから」

 佐夜子さんにはよくしてもらっているし仲もいいほうだ。だけど彼女を友達と表現するのは、自分の中では少し違う。
 大学時代に出来た友達は、就職で地方に移ってしまった。
 今となれば、なにも考えずにあれこれ思うままを話せていた高校時代の地元の友達が懐かしい。

「悪い。責めてるわけじゃないんだ。文句を言いに来たわけでもない……」

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