愛とは決して○○しないこと
コーヒーを注文しテーブルに運ばれてからみどりが話し始めた。
「智也。昨日帰国したのね、じゃあわたしの手紙を読んでくれた?」
「ああ。読んだ。でも俺は納得いかない!
7年も付き合ってるんだぞ?俺たち」
「そうだったわね。でも智也は私が結婚のプレッシャーをかけられて、いやだって言ったよね。
私はそんなつもりなかったからショックだった。
それに智也は私をキチンと見てくれなかった。
どうでもいい存在…」
「そんな事ない!
俺は仕事が楽しくなってきたし、
もう少しで駐在員にもなれるから仕事を頑張ってたんだよ」
「……でもあの最後のメールで
私は智也には私との未来はないと思ったわ。
だから自分の中でケジメをつけたの。
智也と別れてから、隣にいる同期の雄太からプロポーズされて、
彼は本当に私を大切に思ってくれる。
だから彼のプロポーズを受けて私たち結婚して入籍したの」
「は?入籍!」
「そう。私結婚したのよ」
とみどりは左手を顔の横に上げて結婚指輪が嵌っている手を俺に見せた。
「初めまして。岡安と申します。
あなたとみどりが長いお付き合いっていうのは知ってました。
あなたはみどりが通勤電車で痴漢被害に遭っていた事をご存知ですか?」
「痴漢被害…?みどり本当?俺にそんな事話してくれなかったよな?」
「うん。智也には話さなかった。
だって、海外出張でほとんどいない人に話しをしても仕方ないと思ってたから…」
「俺だって…」
「みどりはあなたとの付き合いで我慢ばかりしてました。
映画を観に行くのも1人。恋人のイベントは無し。
それでもあなたと付き合っていた。
そんなみどりもあなたからのメールで傷ついて、
ひとりで考えて、考えて出した答えでした。」
「私は温かい家庭を作りたいと思ったから雄太のプロポーズを受けたの。
そして両家の親たちからも祝福してもらって結婚したのよ。
私、雄太と結婚して本当に幸せなの。
だから、智也も私ではない素敵な女性と結婚してね。
じゃあ、同僚達と結婚のお祝いで食事するからもう行くね。
さようなら福田くん」
「………」
と言ってみどりと背の高い男は喫茶店から出て行った。