愛とは決して○○しないこと
5月になった。
日本はゴールデンウィークだからやたら街には日本人の観光客が多い。
よく日本人に質問されるので、英語で返事をして日本人から逃げるようにしている。
一度、親切に対応したら観光案内させられそうになったからだ。
英語もほとんど喋れないのに度胸あるなぁとコッチが感心する。
今日は黒岩さんとメトロポリタン美術館のアクセサリーコーナーに商品を販売してもらえないか営業に来ている。
営業前に売店のアクセサリー売り場を黒岩さんとチェックしに寄ったら……
……みどり…?…まさか……
俺が固まってるので黒岩さんから
「福田どうした?」と声をかけられた。
俺が見ている方を黒岩さんも見ている。
「あの女性って…もしかして…」
10年前に振られた彼女だと察知した黒岩さん。
「…みどり…」
「じゃあ、隣りの背の高い男性がご主人?」
「はい…」
みどりと背の高い男は笑顔で話しながらお土産を買っているようだった。
たくさんのチョコや子供用のTシャツ、エプロンにスカーフなどを買うようだった。
「子どもさんもいるのかもな…」と黒岩さんがポツリと呟いた。
「アレから10年経ちますから、いてもおかしくありませんね」
「……福田、大丈夫か?声をかけたらどうだ?」
「いえ、アレだけ幸せそうなみどりの顔を見たので大丈夫です。すみません黒岩さん。」
「うん。じゃあ仕事に戻るぞ。アクセサリー売り場に行こう。」
「ハイ。」
みどりがニューヨークに来てる。
黒岩さんが言うように声をかけたら何か変わるだろうか…
「雄太、お母さんたちと子どもたちの写真とメールきた!ホラ」
とガヤガヤしていてもみどりの声だけは聞き取れる。
やっぱり、子どもがいるのか…
俺もそろそろ…みどりへの気持ちにピリオドを打たなきゃな。
振り返ってみどりを見た。
背の高い男と顔を寄せ合って笑顔でスマホを見ていた。
みどりが幸せそうで良かった。
これからもお幸せに……
[智也inNY]