闇が渦巻く世界の果てで
「君、一体何やらかしたの?」
トールさんが出て行った直後、鉄格子の外から声をかけてきた人物がいた。きっと逃げ出さない為の見張りだろう。燃えるような赤色のショートカットに、綺麗なオレンジの平行な瞳。イケメンに分類されるような彼は、楽しそうに笑った。
「本当にねぇ、トール様自ら話をするって、滅多にないことなのに」
彼はそう言うとマジマジと僕を見つめる。
「ぱっと見ただの人間なのにね」
興味津々な雰囲気で彼はジロジロと僕を見てくる。
「あのさ、この国って……」
「牢に入れられてる人に、そう簡単に情報は与えないからね?」
聞こうと思った瞬間に釘をさされる。案外しっかりしている。
「まぁ、けど。俺の名前くらい覚えておくと良いかもね?ネロ・ランドゥーラ」
その名前にハッとする。確か、レンさんがネロに渡せとか言っていた気がする。この彼がそのネロだろう。
「ネロ様、話しすぎでは……」
近くにいた存在感の薄いもう1人の男がネロさんにそう声をかける。様付けされているならそれなりの立場なのだろう。
「問題ないだろ?大した情報は与えてない。どうせ逃げれないんだから」
ネロさんはそう言って笑うと、もう1人の男と去っていった。