闇が渦巻く世界の果てで
「みんな、脱出しよう」
僕のその言葉に、4人は頷く。
「ところで尋、どうやって脱獄するのかは考えてるのか?」
恭の質問に僕は笑顔を向ける。
「出来るかは分からないけど…ね」
僕はそう言って鉄格子の鍵穴に力を集中させる。大丈夫だ。きっと開く。カタカタという音と同時に、鍵がガシャんと落ちる音がした。
「まじか…」
仁が信じられないものを見るような目で鍵を見ていた。
「は、早く出ようよ‼︎」
かりんちゃんは完全に恐怖に溺れており、震えている。恐怖は失敗を導く。あまり望ましくないが、仕方がないことだ。
思っていたより簡単に出れてしまう。向かうのは目の前にある扉。きっとそこから外に出られるだろう。
扉に手をかけた瞬間、嫌な予感がした。
ガチャっという音はなるも、開かない扉。鍵穴があるわけではない。ただ、扉は動かない。
「なんだよこれ…」
恭がガチャガチャやりながら呟いた。
「雑魚が5匹」
突然の声に振り向くと焦る様子もなく平然と立っているネロさんがいた。
「その扉、魔力登録してない人が開けることは不可能だから、諦めな?」
ネロさんはそう言うと、ブワッと殺意を露わにする。
「おっと……無理やり捉えようかと思ったけど、その必要はないみたいだね?」
ネロさんのその言葉に、扉の方を向く。
「ゆかっ………」
「ひ……ろ……?」
そこにはゆかが立っていた。ただ、ゆかだけじゃない。ゆかの手を掴んでるのはレンさんだった。嫌な予感がする。
「ネロ、席を外してくれないかい?」
レンさんのその言葉に、ネロさんは頷くと外に出て行く。それを確認してから、レンさんは扉を閉め、ゆかを乱暴に投げ捨てた。
「何をして……」
「君のせいだよ」
僕の言葉に被せるように、レンさんがそう発する。僕のせい?
「折角さぁ、うまく薬を使ってユカの記憶操ってたのに、ねぇ」
記憶を、操る…?
ゆかを見ると、恐怖に染まった顔でレンさんを見ていた。
「しばらく、調教しないとかなぁ…?」
レンさんのその言葉と同時に、床が抜ける。
そのまま下に落下した。
上を見ると、完全に閉まっている。レンさんは見当たらない。
「地下牢129…本当にひどい犯罪を犯した人を入れる為の地下牢で、私も脱出口を知らない」
ゆかはボソッとそう呟いた。その後、悲しそうな表情で笑って言った。
「尋が生きてて、よかった」