闇が渦巻く世界の果てで
突然の出来事に、何も発することが出来なかった。ただただ呆然とそれを見ているだけの時間が流れる。
トールさんは何回かゆかとキスをしてからそのままゆかを寝かす。そして僕の方を見て笑った。
「大好きな人を、目の前で取られる気分って、どう?」
不気味な笑顔を浮かべるトールさんはそう僕に問いかける。許せないという気持ちが、沸々と湧いてくるのが自分でもわかった。
「まぁまぁそんな怖い顔しないでよ。仕方ないだろう?ユカのこの発作に効く薬は俺たち王族の唾液を一緒に摂らないと意味ないんだから」
トールさんはそう言うと、勝ち誇ったような笑顔を浮かべる。
「当然、君じゃユカを助けることも出来ないよね」
呆然と今の出来事を振り返ることしかできない僕をトールさんは軽く笑ってから、目の前から姿を消した。
「何……アレ」
突然かりんちゃんが口を開く。
「ねぇ尋くん‼︎絶対このゆかって子おかしいよ‼︎なんであんな奴をお兄様って呼んでるの⁉︎」
かりんちゃんは何かが壊れたかのように叫ぶ。
「絶対私たちの敵だよ‼︎怖いし気持ち悪い‼︎そんな子ほっとこうよ‼︎」
その言葉に、カチンとくると同時に、気持ち悪いという言葉が自分にも突き刺さる。
「なぁ、お前、正気で言ってんの?人を非難することしかできないお前の方が気持ち悪いわ」
恭が軽蔑するような目でかりんちゃんを見てそう呟く。
「ねぇ…かりんちゃん。ゆかが気持ち悪いなら、僕も気持ち悪いよね…?だって、」
僕は何かが切れたように喋り出す。そしてかりんちゃんの目の前で、軽く魔力を爆発させた。
「僕だって、彼らと同じような力を持ってる」
かりんちゃんは呆然と僕を見た後叫ぶ。
「尋くんもなの⁉︎気持ち悪い‼︎近寄らないでよ‼︎」
予想通りの反応だったが、傷つかないわけでもない。どうしようか。そう思っていた時だった。
予想外の出来事に目を見開く。
仁がかりんちゃんを軽く殴った