闇が渦巻く世界の果てで
第2章~恐怖の歯車は止まらない~
(一)
「折角だし、この後のゲームに尋くん達も参加したらどうです?」
ゆかが消えてから少し経った時、トールさんがそんなことを言ってくる。
そういえば、ここに来てから大分経っている。ゲームは普通なら終わってそうな感じもする。
「実はですね、尋くん達がいた方が楽しいので、第1ゲームの後しばらくゲーム止めてたんですよね」
そう言うと、僕たちに高級そうな、物語の貴族が来てそうなスーツとドレスを渡してきた。
「これ、着替えておいてくださいね」
それだけ言うとトールさんは消える。
「とりあえず、着替えれば良いんだよね…」
りんちゃんが不安そうにドレスに手を出す。かりんちゃんも、気まずそうにドレスに手を伸ばした。
「あ、あのさ‼︎一回尋くん達、反対側向いてもらっていいかな…?」
りんちゃんの不安そうな声でハッとする。普通に見てたらただの変態だ。僕たち3人は言われた通り反対を向く。
「一回くらい見てみたかったな〜」
「変態かよ」
恭のその言葉に、仁がすかさず突っ込む。その通りだ。
「終わったよ」
その言葉で振り返ると、目を見開く。思っていた以上に、サイズもピッタリで、それぞれの雰囲気に合っていた。
「俺こんな高級そうなやつ着るの初めてだわ…」
恭がぶつぶつ言いながら着替える。僕も初めてだった。
「尋、お前その顔面くれよ‼︎」
着替え終わった後の恭の第一声はそれだった。似合ってると解釈しておく。仁も恭も、かなり似合っていた。女子達がキャーキャー騒ぐには十分すぎる。
というか、なぜ僕たちはこんな服に着替える必要があったのだろうか。
ふと浮かんだその疑問はすぐに解決される。トールさんに案内されたのは、城内のホールだった。案内された場所には、大量の同じ学校の人たちがいる。ただ、少し人数が減っていた。第1ゲームで何人かがやられたのだろう。巻き込んでしまったことへの罪悪感が少し大きくなる。
「あ、尋くん達生きてたの…⁉︎」
遠くで誰かがそう言った。名前は…覚えていない。転校初日で流石に全員は覚えていない。
ふと、会場を見渡すと、1人と目が合う。目が合ったゆかは、僕を見てからすぐに目を逸らすと、トールさんと何かを話し始める。ゆかの反応が少しおかしい。周りの他のレンさんの国の人たちは、僕たちを馬鹿にするような瞳で見ていた。
そっち側にいるのは、ゆか以外全員が男だった。改めて、快斗さんが言っていた特徴を理解する。
「は〜い‼︎みんな注目‼︎」
突然ユーリさんが声を出す。仮面を外したユーリさんの顔に、同じ学校のみんなは驚いていた。仮面の男が、まさかこんなにイケメンだとは誰も思わないだろう。実際自分も思っていなかった。
「ゲームの参加者のみんなは、今はとりあえず楽しんでね〜‼︎で、他の参加者の皆様も、ぜひ有意義な時間をお過ごしください」
突然真面目な口調になるユーリさんは、すごく不気味だった。
「では、ストライアに永遠を」
「「「ストライアに永遠を」」」
ユーリさんの声の後に、あちらこちらからその言葉が聞こえる。ぱっと見はただのパーティだ。
「ねぇ、なんかこっち来るよ‼︎」
誰かがそう叫ぶ。前を見ると、ユーリさんが堂々とこっちに向かってきた。
「まず、今は誰かを殺したら失格になるから打たないようにしてね‼︎あとは…」
ユーリさんは僕の方を見てにっこり笑う。
「尋くんユカは君に渡さないから」
それだけ言うと去って行く。
「ねえねえ、なんで彼と知り合いなの?」
「ゆかちゃんって誰?」
「お前達今まで何してたんだよ」
沢山の質問が飛んでくる。けど僕はそれに応える気にはなれなかった。目の前で楽しそうにトールさんと話しているゆかをただただ見ていた。