闇が渦巻く世界の果てで

~快斗side~

「尋くんをどこに飛ばしたんだい?」

イライラをあらわにしている笑顔でレンはそう聞いてくる。俺はその問いに笑った。

「自分で探せよ」

俺はそう言ってレンから目を離す。そしてレンの後ろにいるゆかという少女の方を見た。

彼の面影が、とても残っている。

俺と1番仲が良かったユーマの面影が。

「ゆかさん。君は強い。君はこんなくだらない奴らより強い。いかなる時も己を信じろ。そいつらに反抗しろ。そうすれば、必ず助けてやる」

俺のその言葉に、ゆかは表情一つ動かさない。ただ、彼女の目に、光が戻ったのがわかった。

「ゆかさん、俺の手を取れ」

「ユカ、そいつの話を聞くな」

「ゆかさん、俺がお前と尋を守ってやる」

「ユカ、そいつの話を信じるな」

「ゆかさん、早く手を取れ。そいつらに反抗しろ」

「ユカ‼︎そいつが言ってることは全部嘘だ」

「ゆかさん、俺も元ストライアの王族だ。トールの義兄(あに)だ。ユーリの父だ。あなたを守るくらいの力は持っている」

「ユカ‼︎」

「あなたの父親とも仲が良かった。アイツに代わって必ず守りきってやる」

俺とレンの声が交互に鳴り響く。ゆかがどっちの話を聞いてるのかはわからない。ただ、彼女の目には決意がある。もう既に、どちらかにつくかは決まっているはずだ。

「私は、初めて会ったばかりの人を信用することは出来ません」

短くそう告げたゆかは何かを嘲笑うような笑顔を浮かべた。レンはそれに少しホッとする。ゆかは、その隙を見逃さなかった。躊躇いもなく、俺が伸ばした手を掴む。

「ユカっ」

「触らせない」

レンが伸ばした手を魔力壁で防ぐ。

「大丈夫かい?」

俺のその言葉に、ゆかはユーマによく似た笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます」

彼女の目には、レンに対するたくさんの怒りがある。一体何をしたのやら。ゆかが俺のところにいる今は、レンは下手に俺を殺すことができない。

(とりあえず、今は勝ったな)

尋を送ったところに行こうとした時、レオンが俺に向けて笑顔を浮かべ口を動かしたのが目に入る。

『████』

読唇術で読み取ったそれを見て、心の中で嘲笑する。

俺はゆかを連れて尋を送った上海に転移した。

~快斗 side END~
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