闇が渦巻く世界の果てで
「改めて俺の口から紹介しよう。中国裏社会のトップとも言われているチャイニーズマフィア终焉のボス、李雲嵐と、雲嵐の右腕の炎天陽だ」
快斗さんがそう言うと、2人はよろしくと会釈する。
今さらっと裏社会のトップとか、チャイニーズマフィアとか言っていたことは置いておこう……
「で?そっちが時を巻き戻した山中尋と、ユーマの娘のユカ・リサキ・ストライア…堀崎ゆかか?」
雲嵐さんはそう言うとマジマジと僕達を見てくる。
「まずは、魔力察知をされないようにしないとな」
雲嵐さんは僕たちの前に何か独特な見た目の飲み物を出してくる。
「飲め」
「これをかよ…」
快斗さんがそう呟く。目の前にあるのは禍々しい変な色の液体だ。飲む気が失せる見た目をしている。
「これを飲めば、表面上の魔力の性質や質を変換できる」
「表面上、ですか?」
僕のその問いに、雲嵐さんは頷いた。
「使える魔力などは変わらないが、周りから見た時の魔力が変わる。そしてこれはまだレン様達に見せていない」
レンさん達に見せていない──つまりは使ってもバレない可能性が高い。
「飲めばいいんだろ?飲めば──」
快斗さんはそう言うと、一気に口に流し込む。
「うぇ────」
すごく顔を顰めたあと、ゆかの方を見た。
「どう──?変わったか?」
ゆかはまじまじと快斗さんを見たあと、呟く。
「快斗さんの魔力が、全く別のになりました────」
信じられないないものを見るような目で液体を眺めながらゆかはそう言うと、決意した様にその液体を飲み干した。
僕も────飲むか
仕方なく飲み干す。すごく苦く、すごくまずいものが口に広がる。
「全員これで魔力察知については解決だな」
雲嵐さんのその言葉を聞いて、自分の魔力も大丈夫になったと改めてわかった。飲んだ本人からしたら、なにも変わってない。不思議な感覚だ。
「それじゃあ次は容姿だな──」
雲嵐さんはそう言うと僕の方に向かって魔力を爆発させる。
「なっ────⁉︎」
攻撃されたのかと思った…が、違った。煙がなくなったと思うと、呆然と目を見開くゆかと快斗さんの顔が目に入る。
「雲嵐、お前いつの間にこんな魔力の勉強したんだよ」
快斗さんはそう言うと、僕に手鏡を渡してくる。そして、鏡に映った顔を見て、呆然とした。
「誰だよ────これ」
声も違うではないか。僕が僕じゃない。鏡に映った僕の顔には、山中尋としてのおもむきは全くない。声も、まるで別人だ。雲嵐さんは、その魔力をゆかと快斗さんにもかける。ゆかが、1番衝撃だった。
容姿も声も、完全に男になっていた。
「これでとりあえずは大丈夫かな」
雲嵐さんのその声に、ホッと安堵する。彼についてきたのは、正解だったと思う。