闇が渦巻く世界の果てで
~トールside~

‘乱れた’

王国全体に流れていた魔力の流れが、一気に変化した。

────無断で外出とは珍しいな

そう思いながら、少しだけ気になり彼の部屋に向かう。ノックしても返事はない。やはり、外出中か。

「入るぞ」

一応声をかけて扉を開ける。勿論中は誰もいない。

それだけじゃない

中に流れている今さっきまでいた魔力の痕跡。ユカの魔力──

おかしい。

確実にアイツへの恐怖心を植え付けて近づけないようにしていたはず。

「解かれたか──」

やっぱり洗脳はしすぎない方がいい。解かれた時の反動がでかい。加減が中々難しい物だ。

ただ、アイツがユカの洗脳を全て解いたのなら、アイツに魔力は今ほとんど残っていない。そこまで気にする必要はない。

どうせ何かやりたいことがあって少しの間外しておくだけだろう。

そう思っていた。

◆ ◇ ◆

3日経っても帰ってこない2人。

「チッ────アイツの反抗期は4回目だ。そろそろ本気で殺してやろうか──?」

自分でも信じられないくらいの苛立ちが湧いてくる。

俺はここまでユカに執着している。

それなのに彼女はいつまで経っても手に入らない。

最初から薬とか洗脳とかしないで、直接支配する方が良かったのか?

レンもレンだ。

今まで何度も俺に反抗してきて、その度にしっかりと力の差を見せつけたつもりだったのに、また反抗するとは度が過ぎる。

きっと雲嵐も天陽もだ。元々カイトにしかアイツらは興味がなかった。

ウザイ

ウザイなぁアイツ

あぁ───アイツらもか

きっとネロもレオンも裏切ったな。魔力の流れがまた変わった。

所詮みんな駒でしかない。

使えないやつは捨てればいい。

殺せばいい。

「トール兄様ぁ‼︎」

突然飛んできた無邪気な声に顔をあげる。そこにはユーリが立っていた。

「トール兄様‼︎なんでこんな何日もユカに会えないんですか⁉︎レン様もいないし──つまらないです‼︎」

喚き出す。

──使える。

コイツは元々レンと雲嵐が拾ってきた。だからこそ2人はコイツをかなり大切に思っている。

雲嵐に関しては、ユカよりも断然ユーリの方が好きなんだろう。

うまい具合に使って、ついでに裏切り者は全員処すればいい。

「ユーリ──一緒にユカに会いに行こうか──?」

笑顔でそう問いかける。

純粋なコイツは、勿論すぐに騙された。

「行く‼︎行きたい‼︎」

────可哀想なやつ。

~トールside END~
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