闇が渦巻く世界の果てで
レンから衝撃的な連絡が来たのは、何十年もしてからのことだった。
【ユーマが魔力を捨てて作った子供が、魔力を持っています。女の子ですが、成長すればユーリをも越す力を持っているかと】
色々あり、王国から離れていた俺に届いたそのメッセージは、かなり嬉しい物だった。
「ユカちゃん───か」
レンがうまい具合にその女の子を王族にし、もう大分馴染んできたらしい。
早く会いたい
そんな気持ちが沢山あった。
ユーマも魔力を戻し、またストライアにいるらしい。
問題は、ユカちゃんの母親だ。
将来邪魔になる可能性が高い。
今のうちに殺しておくか───?
レンに命令して母親を殺す。
ただ事件はその後に起きた。
母親の死を知ったユーマが、子供の記憶を全て消してどこかへ消えた。
彼も馬鹿じゃない。
追跡されないように、魔力は妙な所に捨ててあった。
探すのには本当に苦労したし、見つけた時にユカはユーマの家にいない物だから、どうするかはかなり悩んだ。
「お願いですトール様‼︎ゆかだけは───あの子だけは───今の学校生活を守ってあげたい‼︎今の笑顔を大切にしたい‼︎」
そう、俺に懇願してくるユーマを見て、俺は微かに微笑んだ。
なら、そうしてやろうじゃないか。
しばらくはその学校生活を楽しませてから、全てを奪ってこちら側に取り入れよう。
彼女が大きくなって、不老になるくらいまで成長したら、迎えに行ってあげないとな───
俺は躊躇いもなくユーマを殺した。
あくまでも病気で死んだかのように───
「お父さん⁉︎嘘…やだ…」
家に帰って倒れていたユーマを見て涙を流している女の子。
この子が、ユカ───か。
ユーマに似ていて顔立ちが整っているし、レンに王族として登録されただけあって、髪の色、目の色も少しストライアの王族らしい。
可愛い
そう思った。
初めて女の子に対してそんな感情を抱いた。
手に入れたい。
自分の物にしたい。
そういう感情が疼く。
だから、彼女が高校生になる少し前から、人間達を集めた殺し合わせるゲームを開催した。
何校もの学校を巻き込んで、沢山の犠牲者を出した。
より人間を減らしてストライアの勢力を拡大させるために。
そしてたまたま巻き込んだ学校が、ユカのいる学校になった時、丁度ユカが思い通りに成長した時だった。
「絶対に、手に入れる───」
ユーリがどこで何を聞いているかは分からないから、わざわざ初対面のふりをして振る舞って、それで少しずつ彼女を追い詰めた。