悪役令嬢ふたりの、のほほん(?)サバイバル暮らし
アルベルティーヌ・ル・ハルベリーは、何を隠そう、由緒あるハルベリー伯爵家の一人娘である。本来なら、こんな田舎にいるはずがない。ハルベリー家は貴族派の重鎮であり、皇后や宰相たちを輩出してきた、名家中の名家である。
そのやんごとない血筋ゆえ、アルベルティーヌが物心ついたころには、すでにおない年の王子の結婚も決まっていた。未来の王妃として、アルベルティーヌは蝶よ花よと大事に育てられてきたのだ。
しかし、物語はそう簡単に終わるわけがない。
アルベルティーヌはどういうわけか、王子に一方的に婚約破棄され、こんな田舎のボロ屋敷に身を寄せることになったらしい。一方の王子は、ミニュエット・ジェントリーという名の、子爵家の令嬢と婚約を宣言したという。
婚約破棄されたうえ、ほぼ島流し状態の彼女につけられた従者は、長年アルベルティーヌの面倒を見てきた年老いた乳母一人と、申し訳程度の護衛として派遣された若い騎士一人だけであった。
王宮の真ん中でふんぞり返っていてもなんらおかしくない伯爵家令嬢の末路としては、かなり惨めなものだ。
――まあ、どうせ浮気相手のミニュエットとかいう女を、アルベルティーヌさんがいびり倒して、見かねた王子さまが婚約破棄を申し出たって感じでしょう。悪役令嬢が分かりやすく破滅したって感じですわよねえ……。
パメラは、アルベルティーヌのことを悪役令嬢仲間だと思っている。半ば勝手に。そういう彼女もまた、悪役令嬢として分かりやすく破滅した貴族令嬢であった。