悪役令嬢ふたりの、のほほん(?)サバイバル暮らし
ダグラスはパメラの自信満々な笑顔に少し頬を染めて見惚れたあと、何かを思い出したように軽く咳払いをする。
「そういえば、怪しげな男たちがいると、商人たちが噂していましたよ。最近、この近くの村に出没しているそうです」
「怪しげな男たち?」
「ええ。平民の恰好をしているものの、明らかに貴族だと分かる立ち振る舞いをしている一団だそうです」
「なんでまた貴族がわざわざ平民の恰好を? どんなに隠したって、どうせバレますのに」
「よほど世間知らずなのでしょう」
「困ったものね。はあ、貴族なんて城に閉じこもっていればいいものを……」
パメラも貴族のはしくれなのだが、あまりにこの暮らしに馴染みすぎているためか、最近はすっかり平民のような物言いをしてしまう。
「とにかく、貴族なんて関わってロクなことはなくってよ。しばらく村に行くのは避けないと」
「まあ、もしトラブルになったとしても、俺がパメラさんを守りますよ」
ダグラスは、頼もしい微笑みを浮かべる。パメラは怪訝そうな顔をした。
「わたくしを? ダグラスはアルベルティーヌさんの騎士なのだから、アルベルティーヌさんを守るべきではなくって?」
「あっ、いや、その……。それは、そうなんですが……、特別に貴女を守ってあげたいというか……」
ダグラスが真っ赤になってしどろもどろになっていると、アルベルティーヌが乳母を連れてキッチンに戻ってきた。
「お腹がすきましたわ! 早く食べましょう! 用意はできて……って、あらダグラス、お顔が真っ赤ですわよ。風邪でもひきまして?」
「なんでもありません! それより夕食の準備ができましたので席についてください!」