断罪されかけた悪役令嬢ですが、メンヘラ隣国の皇太子に溺愛されましたの!?
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「何を笑ってらしゃるんですか、気持ち悪い」
「その言葉には、あんまりかとマリア嬢」
「いいえティカー様は、もっと乙女心を学ぶべきですよ。いつもしつこいですし」
「マリア嬢、日に日に冷たさが増してませんか?」
ティカーの微笑みは心臓に悪いとマリアは顔を赤くしていた、無理矢理連れて来られた時には感じなかった感情を辛辣な罵りをティカーに浴びせごまかしていた。
紅茶を飲むフリをして、じっとこちらを見ているプリシラの菫色の瞳があった。
「おや?プリシラ……」
優雅にごまかすプリシラに気づいたティカーが、不機嫌そうにわざとらしくマリア。
「何でもないですよ、お二人とも」
「そう言われると気になる……」
「あっ!ティータイムは終わりです、急ぎの執務があるとの伝言を忘れていましたわ。すみませんお急ぎを」
プリシラがうっかりなど珍しいが、ティカーも急ぎの執務なら早く終わらせてマリアとの時間を増やしたいから急いで終わらせると二人を置いて先に行ってしまった。
「マリア様、実はティカー様を意識されてたりしますか?」
「違っ、違いますわ誰があんなの」
図星である。
本人も無自覚だったのだろう、出会いが出会いなだけに恋心にしたくないのだろうとプリシラはマリアとティカーの後ろ姿を見比べていた。
そして今日だってティカーの甘い言葉に冷たい言葉を、返しながらも意識してるのが明らかだった。
「マリア様、実はうっかりティカー様宛ての手紙をうっかり渡しそびれまして私はこの後仕事がありますのでマリア様から渡して頂けませんか?」
プリシラがマリアとティカーの中を深めようと作戦を練るが、そう簡単にはいかないらしい。
マリアはプリシラの作戦には気づたようで、ティカーと二人きりにはされたくないのが伝わってくるプリシラの知らない内に何かあったのだろうか。
「嫌ですわ、プリシラったら私も忙しいのよ……」
「城で毎日散歩と手紙を書く以外、食べて寝てらしゃっているのに」
「プリシラ!、私とティカー様をくっつけようとしないで。手紙は、自分で渡して来て」
マリアは怒ってるようにも見えるがプリシラの予想通り何かあったのが、見え見えな返事を返してきた。これ以上マリアにティカーのところに行くように言うと本気で逃げ出されそうだ。
プリシラは、ポケットに手紙を直すと頬に手を当てがっかりしたような顔をした後に優しい声で。
「マリア様、ごめんなさい。私お節介でしたわ」
謝るプリシラにまだ許せないと、マリアはわざとらしくそっぽを向いてプリシラの様子を伺っている。
プリシラは、そっぽを向いたままのマリアの前に回り込み少し悲しそうに語りはじめた。
「嬉しいかったのです、マリア様が私やティカー様に心を開き初めてくれてだからついお節介を」
「……」
「いつか本当に心を開いてくれたら、私もティカー様も嬉しいです」
マリアは、プリシラの言葉がすーっと胸に溶けていく暖かさとせつなさを感じた
プリシラは初めてあった日から優しいかったし、誰よりも自分を見てくれたから心はとうに開いている。
だがティカーへの気持ちの変化は、マリアにもわからないから何も言えなかった。
「では私は、ここを片付けて仕事に戻ります」
「プリシラ――」
「マリア様は、散歩でもお好きな事をなさってて下さいな」
片付けを始めた、プリシラを呼び止めるもプリシラは片付けをして去り際に散歩をすすめてきて行ってしまった。
立ち去るプリシラをしばらくじっと見つめていた、そしてその後ろ姿にぼそっとマリアは呼びかかていた。
「私もあなたに少し心を開いてもらえて、嬉しいわ」
一人マリアは、城内の礼拝堂へ向かっていた。
美しい礼拝堂の扉を開けると、マリアは
大きなオルガンの蓋に寝そべる子猫の方へ歩き出すと子猫がマリアに気がつきこちらへ駆けてくる。
「ここに来ると癒されわね、それとプリシラにはあんな態度とっちやって悪かったな。でもプリシラが無理矢理くっつけようとするから」
「みー、にゃー」
礼拝堂に住み着いている猫に自分の気持ちを吐き出すのが癖になったのは、ちょうど数週間前のことだった。
ここに来ると癒されるがマリアはどうしても思い出してしまう、あの日のことを。
「わ、わぁ!、森を抜けたらこんな素敵な礼拝堂があったなんて知らなかったわ」
「にゃー、にゃごごっ」
「子猫さん、ごめんなさい脅かすつもりはなかったのだから怖がらないで」
「そこに誰か居るんですか?」
大真面目に頷き返すと、調子が戻ったのかアイリーンがきっと下からにらんできた。
「その声は皇太子様ではなくって?」
「嬉しいな、わざわざ私を探し回って下さってたなんて」
「いいえ、私は森で迷ってたらこちらの美しい礼拝堂が見えたから見に来ただけですわ」
そっぽを向いて不機嫌そうに答えつつ、ティカーの足元に擦り寄る子猫を見つめていた。ティカーは子猫を撫でながら残念そうに笑ってから、立ち去ろうとしたがマリアに服の裾を捕まれ立ち止まった。
「私を探していたわけでは、ないんですよね?
なら私は立ち去ろうかと思ったのですが……」
「待ってください、皇太子様」
ティカーを見つめ必死に服の裾を掴みながら、立ち去ろうとするティカーを邪魔するティカーはマリアの手を服の裾から離させると
マリアを見つめてそれから足元の子猫を見つめ
て何かわかった顔をした後にマリアに顔を近づけ。
(服を掴んだから怒ったのかしら?でもカズラール皇太子がこの子から離れたらきっとこの子もどころかへ行ってしまうだからつい止めてしまったわ)
怖くなって目を閉じるマリアを怖がらせないように、甘くでも悪戯っ子のような声でティカーが声をかける。
「マリアお嬢、私に何かようですか?いえ間違いました私に子猫に好かれる方法を教わりたいのでしょ。顔に書いてありますよ」
ティカーの一言に目を開けるどころか、両手で顔を覆いながらもじもじと頷いた後ゆっくりとティカーを見つめながら教えて欲しいとマリアは頭を下げた。
「いいですよ、マリア嬢のお願いなら」
「本当に?」
「本当です。ですが条件があります」
教えてもいいと言われて喜んだのもつかの間、ティカーに条件があると言われて再び不機嫌そうにしかめっ面になるマリア。
(いけませんわマリア!しかめっ面なんかして、こちらがお願いしてるんですから笑顔でお聞きしなくてわ。子猫のためですわ)
マリアはしかめっ面の顔のまま足元でティカーとマリアの周りを回っている子猫に目をやり、ぐっと決意を決めてティカーを見て訪ねた。
「じ、条件ってなんですの」
「マリア嬢、私を名前で読んで下さい」
「それが条件なんですのね、ティカー皇太子様」
少し嫌そうに棒読みで名前を呼ぶとティカーは、首を横にふり違う残念そうにした後にマリアの髪に優しくキスをして。
「皇太子様は、堅苦しいですね。ティンと呼んで下さい」
「え、えっ!では、ティカー様と呼びますわ。さすがに婚約者でもない方を愛称でよべませんわ」
ぴくりとマリアが眉を動かし、ダメですと拒否したのでティカーは仕方ないとそれで手を打ちますと納得してくれた。
ティカーが子猫を抱き上げてマリアに優しく髪にキスをする、マリアはばっと離れてやめて欲しいと逃げるとティカーが子猫を指差し
『飼い主が触れるものは、安心してさわるんですよ』と微笑んだ。
「子猫のためにそうしないとなら、先に言ってくださいませ。ティカー様のいつもの癖かと思いましたわ」
不機嫌そうに答えつつもティカーからはマリアの真っ赤になった耳ははっきりと、見えており。ティカーは、すみませんと申し訳なさそうにしながら腕の中の子猫をなでていた。
「すみませんマリア嬢でも、見てください。子猫があなたに興味を持ってますよ」
「まぁ、気がつきませんでしたわ」
「手を伸ばして、マリア嬢に触ろうとしてますね。近づいて撫でてあげて見てください」
「はい。子猫さん失礼しますわね。ふわふわしてますわね」
マリアは、ティカーに抱かれてる子猫が自分に触れたがってるとティカーに聞き恐る恐る触ってみると子猫は想像していたより暖かくてびっくりする。それに先ほどと違い威嚇する所かマリアの腕に顔を擦りつけて嬉しそうにしている。
「この子もすっかり、あなたの虜のようですね。こんな事なら子猫の扱い方など教えなければよかったですね、こいつめ」
子猫の顔を覗き込み少しヤキモチをやいたような顔をしてから、マリアを見ると拗ねてらしゃいますのと笑われてしまうティカー。
それから二人は、日がくれるまで子猫と遊んでいたがメイド達の探す声がしてそれぞれが
それぞれの部屋に帰っていった。その時からだろうかマリアは、ティカーの無邪気な笑顔に心を奪われてしまっている。
焦るクロードをきょとんと見たあとで、のんきにアイリーンが笑い出した。
両頬を押さえてベッドでもだえる、あの時の事を思い出すと何故かドキドキしてしまう綺麗なお方だけど変わってて好きになんかならないと思っていたのに今はもう頭の中がティカーだらになっていた。
「違うわ、あの時だって私は私はティカー様の事なんか好きじゃないわ」
目を閉じると森にい行くとティカーに会うと、あの日の事を思い出してドキドキしてしまうもっとティカーを知りたくなる。
ティカーは、本当に私が思うような悪い人なのかしら本当の彼が知りたい。
バンバンと窓を引っかく音にマリアは、窓の方を見ると子猫が必死に引っかき可愛らしい声でこちらを呼んでいた。
「まぁ、あなたはティカー様の子猫さんではなくって。礼拝堂から逃げ出してきましたの?」
(困りましたわ、もう真夜中プリシラも寝ていますし。追い返すのも可愛そうですし、キッチンからミルクとササミでも持ってこようかしら)
子猫に待っててねと言って、急いでキッチンに向かった。
キッチンに向かうと人影がごそごそとしている、マリアは悲鳴を上げかけるが人影に口を塞がれてしまった。