私の気持ちを思い知れ
「待って!」
そう言われた瞬間、私は彼に腕を掴まれた。
そのせいで自然と私と彼の向き合う距離が、さっきみたいに近くなる。
至近距離で見る彼の表情に、一瞬恐怖を感じた。
「あ、ごめん…」
恐怖を感じたのが、顔に出ていたのだろうか。
彼は掴んでいた私の腕を離した。
「君、どこかで会ったことあったっけ?」
やはり私の存在に違和感を持っていた彼。
ここでバレるわけにはいかない。
「無いです、今日が初めてです。
先輩は確か…。そう、今日入学式で代表の挨拶をしていた人ですよね?
堂々としていて素晴らしかったです」
話を逸らして、私の正体を突かれないようにする。
その為に何を話せばいいのかが、瞬時に分からなくなる。
「覚えていてくれたんだ、ありがとう」