愛しているから 好きにしろ
「このほうがいい。俺の奈由」
そう言うと、もう一度キスをする。
ソファに倒されて身体をまさぐられるが、私が涙目になっているのに気づいて離れていく。
「初めてだな。お前が他の女に嫉妬してくれたの。うれしいもんだな」
そう言うと、私を優しく抱きしめた。
「……先輩」
「馬鹿なヤツ。お前以外なんて絶対にないって、大学時代から言ってるのに。でも嬉しいよ。お前が俺を渡したくないと思っていることが分かって。俺なんてしょっちゅう嫉妬してる。今日のナンパ野郎にも」
「先輩、私今日わかった。先輩のこと考えたことあるかって転職のとき聞いてたでしょ。考えるってそういうことだったんだね。ごめんなさい。今日、先輩の周りにたくさんの綺麗な女の人がいて先輩が笑顔で優しくしているのを見て、私……」
涙が出てくる。
「ヒック。先輩のこと誰にも渡したくないの。私だけの先輩なのに。嫌なの。お願い、誰かのところに行かないで」
すがって泣いている私を見て、先輩は大きなため息を吐いた。
「お前。俺のこと信用してないのか?」
「信用してるけど、そうじゃないじゃん。グスッ、みんな、お嬢様れしょ。先輩の会社のためにはそういう人と一緒になったほうが良いに決まってる。先輩だってわかってるれしょ。みんな私より美人だし。ヒック、お金持ちらし」
「だから?お金持ちで、お前より美人かどうかはわからんが、そう思うほどの美人だとしてそれが何?俺にとってそんなことはどうでもいいし、いくら脅されても結婚しない。なんなら、この仕事辞めてもいいわ。別にこの会社じゃなくても仕事はできる。お前は世界にひとりしかいない。仕事は他にもある。どっちを取るかなんて考えたらすぐ分かるだろ」