愛しているから 好きにしろ
「達也。彼女は良いライターだ。結婚することで三橋の妻としての仕事も増えるだろうし、子供もできれば仕事が出来るかどうかは正直わからないだろう。彼女の選択に任せればいいと思うが、出来ることなら少しでいいから書かせてやってくれ。書かなくなると勘が鈍る。それに、子育てや社交界もネタの宝庫だ。うまく書けたら大もうけできるぞ」
「そうだな。こいつは実は本当はとても強い。そして優しくて天然だ。こんな俺にピッタリの女、どこを探しても見つからない。彼女がやりたいことをできるようにするのが男の甲斐性ってやつだ。お前の気持ちはわかったよ。すっかり奈由の師匠気取りなのが気に食わないがな」
「で?いつ結婚だ」
「とりあえず、面倒だが結納だ。時間はかからん。ばあさんが奈由に内緒で屋敷の使用人を動員して大分前から準備してる。すぐに出来るだろう。じいさんは喜びすぎて卒倒しそうだな」
「しかし、今回変装の理由聞いたか?」
「いや。言わなかった」
「お前の爺さんのためとか言ってたぞ。自分だと分かると大変なことになるとか。なんなんだ?」
そうだったのか。
可笑しくて笑いが止まらない。
「爺さんは、奈由が大好きでとにかく来ると話しかけて側に置いて離さない。なんだかんだ言ってずーっと側にいる。婆さんは爺さんから解放されて喜んでいたが、奈由は大変なんだ。あいつとにかく断れない性格だからな」
「まさか、そんな理由だったとは。信じらんねえ」
「そこが奈由のいいところだ」